『伝わる味』

「待ってました!」届いた荷物を開けるなり、ダンナさんの頬がゆるみました。そう、彼は「これを食べなきゃ年がはじまらない」というほど毎年楽しみにしているのです。それは神戸の叔母が代々受け継いできたニッキ餅。叔母の実家では暮れになると昔ながらのやり方で餅をつき、親族のみんなに分け、お正月に戴くのが習わしになっていたそうなのです。ウチのダンナさんが小さかった頃、叔母はそれを嫁ぎ先の親族にも分けるようになり、今度はさらにお嫁にいった私にも分けてくれるようになったというわけ。
「これはあえてちょっと焦がすのがいいだよ。ぷーっと膨らんでプスン!と餅がはじける一歩手前、ここで火を止めるんだ。あーきたきた!」ちょうどぷっくり膨れあがった餅を彼から受けとり熱々をひとくち。うん!確かに焦げ目がパリッと心地よい歯触りで、そのあともっちりとした黒糖の甘さとニッキのよい香りが広がります。やっぱりこれはたまりません。実は今年は餅作り名人のおばあちゃんの体調が優れず、もう作れないかも、といわれていたのでした。ところが、毎年みんなが楽しみにしているのを知っているお嫁さんと孫たちが、意を決して餅作りに挑戦してくれたのです。どんなに便利になっても、受け継がれてきた家族の味はどこにも売っていないもの。それを家族みんなが大事に思っているって、幸せなことですよね。ダンナさんといっしょにお茶をすすりながら、体の芯がゆっくり温まっていくのを感じた今年のはじまりのことでした。

 
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